電磁弁のおはなし

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第3話:本質安全防爆構造電磁弁

 まず防爆構造について少し説明しておきます。電気というのは大変便利なものであることは言うまでもありません。その反面この電気エネルギーは短絡などによって外部に漏れるとたちまち点火源となってしまうのです。このような電気を使う電気機器を可燃性ガスで充満された雰囲気で使用するには様々な構造が定められているのです。
 例えば、電気機器を危険なガスから隔離する内圧防爆構造や油入防爆構造、電気機器をハウジングで覆って炎が危険なガス中に漏れないようにした耐圧防爆構造などがあります。今回説明する本質安全防爆構造というものは、電気を制限して電気機器自らを点火源となり得ないようにしたものです。さらにこの本質安全防爆構造のみが最も危険な特別危険箇所での使用が認められた構造なのです。
1 本質安全防爆とは
 メタン、エチレン、水素等の可燃性ガスの充満した雰囲気において、消費電力の大きなモーターや照明などの電気機器を使用したらどうなるでしょうか?
電子回路のスイッチ操作の開閉火花がガスへ点火し、爆発を誘起することがあります。
 消費電力の小さなPersonal handy phoneやMD(Mini disc)などを可燃性ガスの充満した危険箇所で使用できるのでしょうか?
 これら小電力の電気機器では正常に使われている限り点火を起こすことはないでしょう。しかし、これらの電気機器の電子回路内部には大きな電力を蓄えています。もし落下させて内部の電子回路を破損したとしたら、最悪の場合には可燃性ガスに点火をおよぼすでしょう。
 本質安全防爆とはこのような可燃性ガスの充満した危険な雰囲気において使用できる電気機器のことです。また、落雷などの影響を受けて故障したとしても危険箇所の電気機器へは過電流が流れないようにする構造をもった電気機器なのです。
2 このような危険区域に電磁弁等の消費電力の大きな電気機器を使用させるにはどのような条件が必要でしょうか。
条件1、故障時の過電流の制限
 落雷等の影響や過失によって過電圧がかかっても電気の逃げ道を確保して、危険箇所のガスへの点火を避ける構成とする必要があります。

条件2、電気エネルギーの制限
 電圧および電流を制限することで、電気火花のエネルギーを小さくしてガスに点火させないようにする。CENELEC規格において抵抗回路の点火限界があります。(図1)

条件3、温度上昇に対する制限
 電気機器の温度上昇をガスの着火温度以下に制限する必要があります。
抵抗回路の点火限界
3 これらの条件をクリアするために実際の電磁弁ではどのような構造となっているのでしょうか。
低電磁弁 本質安全防爆システム構成図
 条件1、条件2の過電圧や過電流に対処するためセイフティバリアといった安全保持器が使われます。 セイフティバリアにはメーカーによって種類がありますが、ツェナダイオードを用いた例を図2中央に示しています。このセイフティバリアは図中に示したように、左側よりヒューズ、ツェナダイオード、抵抗より構成されています。ヒューズは過電流が流れようとしたときに切断し、危険箇所の電気機器(電磁弁など)への過電流を遮断するものです。ツェナダイオードにはツェナー電圧というものがあり、高電圧をかけても一定の電圧を保持するのです。
  抵抗は、電流を制限するもので、図1で定めた最小点火電流値以下に保持するものです。
  このような構成のセイフティバリアを図示するように危険箇所に設置した電磁弁と安全箇所の電源との間に設置して、安全を保持するシステムができるのです。つまり、電源の操作を誤ったり、落雷の影響を受けるなどして大きな電圧が出力されても、セイフティバリア内のヒューズが切れ、仮に切れなかったとしてもツェナダイオードが働きアースへ放電し、さらにこのツェナダイオードを2個設けることで2重、3重のバリアを構成して過電圧がかかることを防ぐのです。そして、抵抗にて最小点火電流をキープして例え危険区域に断線や短絡といった故障が生じても、可燃性ガスを点火する程のスパークを発生させません。これにより条件1、条件2に対応できるのです。
4 次にこの制限された小さな電流によって、電磁弁がどうして作動できるのか説明します。
 アスコ製(IS300シリーズ)の本質安全防爆構造の電磁弁には図3に示す電子回路が組み込まれています。
 この電子回路はダイオード・ブリッジ、電力を蓄えるコンデンサ、電磁弁を作動させるコイル、コイルの通電のスイッチとなるSCR、ツェナダイオードなどより構成されています。
 この電子回路を含めた電磁部の端子間の入力電圧と電磁部の消費電流(X位置にて検出)の特性、コイルのみの消費電流(Y位置にて検出)の特性を図4に示しています。
 電磁部全体の消費電流は小さく最小点火電流以下に保たれていることが分かります。
 また、これらの特性図より電磁部端子間の入力電圧がツェナ電圧に達した時にコイルの消費電流が急に大きくなっていることが分かります。これは、図3に示すようにコンデンサが充電され(a)、ツェナ電圧に達した時にSCRによるトリガが働き(b)、コンデンサに蓄えられたエネルギーがコイルへ一気に流れる(c)ためです。

電磁部 電気回路
電流、電圧特性図
 電磁部への入力電流が制限されて小さくなっているにも関わらず、コイル内の可動コアを引き上げる(電磁弁を作動させる)ことができるのはこのためです。
 そして、一旦可動コアを引き上げた後は、バリアで制限した電流でその状態を保持します。この結果消費電力を小さくでき、条件3の電磁部の温度上昇も少なくなるのです。
 なお、電流がコイルへ一気に流れた瞬間には最小点火電流を超えるのではとの疑問やコイルに生じた逆起電力はどうなるのかと疑問を抱かれたと思います。これに対してはダイオード・ブリッジを設けたことにより大きな電流はコイル内で消費でき、最小保持電流以下となって安全に回収されるのです。さらには電子回路がコイルとともにエポキシ樹脂で封止され外部から電気的に遮断されるとともに、機械的に強固なものとなっています。
以上、本質安全防爆構造の電磁弁です。
なお、アスコグループでは次世代仕様の本質安全防爆構造の電磁弁を開発しております。
 
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